対談「ストーカー被害を考える」 


NPO法人ヒューマニティ理事長 小早川 明子さん
公益社団法人 被害者サポートセンターおかやま(VSCO) 高原 勝哉理事

 以下敬称略

高原
 
  質問用紙が一杯来てます。私自身も一杯聞きたいんです。そういうことなのでどうぞよろしくお願いします。それでは、資料Ⅱの1ページをご覧ください。桶川、長崎、逗子とストーカー問題は社会の耳目を集める事件が発生する度に制度の創設、改正がなされてきました。そして、ここ非常に大事なんですけれども、昨年10月の三鷹事件、これを契機に警察庁がストーカーに対する総力を開始されたんです。去年の12月から。だから、それまでの警察の対応とそれから以後の対応は変わってきているということをしっかりと押さえた方がいいと思います。その上で、資料Ⅰ、これは大阪ストーカー事件ですね。これがね、今年の5月2日なんですよ。つまり総力戦が開始された後に起きた事件です。で、この中に危険度判定というのがあります。小早川さん、これはどのような経緯でできたものなのか。また、このような制度ができたとことに対するあなたの評価をお聞かせいただけますか。
小早川  はい。この危険度判定というのは、やはり長崎事件とか三鷹事件等、警察官が相談を受けたにも関わらず加害者の危険度を、その逼迫性といいましょうか、見抜けなかったなという反省の基に、精神科医の協力を得てチェックシートを作ったんですね。このチェックシートを被害者がチェックをして、そして警察官も項目に参加してチェックをして、合計40項目なんですけど、この結果判定で危険度を4つに分けて、一番最重要な危険度をA、B、C、Dとするならば、Aが一番危険だってことであれば逮捕を急ぐ等の判断材料にするということで作ったものを、今一応全国でこれをちゃんと男女の揉め事事案に関しては全てチェックするようにというような通達が出ているというふうに把握してます。私はこのチェックシート自体は非常に参考になる物だというふうに実は思っていまして。というのは、この精神科医は私の知り合いの精神科医で、福井裕輝さんという方なんですが。逗子の事件が起きた時に、私はたまたまその被害者のカウンセリングをしてたもんですから、事情を知ってたもんですから、このチェックシートを試作段階だったんですけど、私自身がチェックをしてみるということをやってみました。そうしたらやはり、最も危険だというレベルの結果がでたもんですから、これはチェックシートとしての信憑性はあるなというふうに私は感じましたし、もっと言うと、もっと早くこういった物が警察の手にあれば違ったのではないかなというふうに思いました。
高原

今日は個々のケースの論評はしないという前提でやっておりますので、あまり深く関わるつもりはないんですけれども。少なくとも新聞記事を見る限り危険度はBだった。それが何故かCに下がっちゃった。そこで殺人事件が起きたという、ここに注目しなければいけないと思っています。

いずれにしても、警察庁の目玉の一つが、この危険度判定で、すごい前進だと思います。もう一つが、資料Ⅲの新聞記事にもありますけれども、見出しに相談、捜査一元化 迅速にというのが書かれています。「相談、捜査一元化 迅速に」これも警察庁の打ち出した目玉の二つ目だというように思いますが、そのことの意味と評価をお聞かせいただけますか。

小早川  これまでストーカー相談は、いわゆる所轄の生活安全課が行政的な側面で、防犯という観点で担当していたんですけど、生活安全課が受けるだけでは事件を防げないということで、刑事課の協力も得るというふうに、所轄においては刑事課も参加して被害者の相談にのると。縦の関係で言うと、警察署長に報告すると同時に、もっと迅速に、本部の方にプロジェクトチームを作って、ストーカー対策の専門の窓口、機関を作って、そこに現場、担当の方から報告を上げると。そして署長の方に県警本部の方から指示が出るというような一元化と総力戦ですよね、捜査も刑事課と生活安全課が一元化して当たるというような協力な警察の対応を構築したということだと思います。
高原  資料Ⅲの中に警察庁の通達を全部載せました。本気で警察が今どういう姿勢で臨もうとしているのか、どこに力を入れておられるのか、私たちの方もしっかりと認識したうえでどうやって連携ができるかという大事な部分だと思いましたので入れさせていただきました。次に、資料のⅣ。これは、その中に、3のポイズン。この段階になると警察の力を借りるしかありません。しかし、警察に総てをお任せしておけば良いのか。あるいは警察に対する批判だけをしておけば良いのか。私はどちらも間違いだと思います。今まではマスコミを含めてそういう論調できましたけれども、警察だけではやはり限界があるんです。この点について、小早川さん、多分ここら辺があなたが一番言いたいところだと思うので、ぜひご意見を。
小早川 まずは、とにかく被害者が警察に告訴をするという意志をしっかり持つということもすごい大事なんですよね。警察に加害者を排除してもらうためには、被害者が強い意志を持って警察に告訴を願い出るということが大事なんですが。さっき私が言いましたように、被害者自身が心に傷を負っているので立ち向かう力が弱くなっているっていうのも否めないところであります。なので、警察署に行くと警察官がどうするんだっていうふうに、告訴した方がいいんじゃないかというふうに言ってもなかなかそれができないというところですので。実は被害者をサポートするというような周囲の人たちの力っていうのがものすごい大事だと思っていまして。告訴をためらう理由は報復を恐れる心理とその後の生活の変化ですから、平野区の女性もですね、子どもがいるとか夫や生活がっていうところで告訴をためらったと聞けば、そこにこそ、例えば行政の相談員がサポートして警察署まで同行したりなど、できることならして、生活の相談、生活は大丈夫だよと、しっかりサポートしますよというような、あるいはシェルターがあるよとか、一時金が出るよとか、様々な生活扶助の方法があるよというようなことをバックアップ・情報提供して、被害者がしっかり告訴をできるようなサポートをするっていうような周囲の取り組みが不可欠であろうと思います。もう一つは、警察に捕まえてもらうだけじゃなくって、実はポイズンを放っておくと事件になってしまう。事件が起きてしまった後っていうことでは手遅れなわけですから、その前に、私が思っているのは加害者の家族というような資源を使うといいましょうか、加害者の家族も実は非常に困っておりまして。自分の子ども、あるいは関係者がストーカー犯罪で捕まるのは困るわけですから、ここに、例えば、事件が起きる前に弁護士等が介入して、例えば加害者の家族の方に連絡をいれてこちらの方の要求を伝えるとかですね、そういった取り組みはあっていいと思います。
高原  もう一度資料Ⅳをお出しください。今の問題と重複した問題かもしれませんが、「報復を恐れる心理について」という項目を入れております。被害者の多くは相手が処罰されることを求めていないし、逮捕されてもすぐに戻ってくるという無力感を持っていると。例えば、殴られたと、しかし大したケガではない。これはやはり犯罪ですから、傷害罪にはなるんです。じゃあ意を決して警察に被害届を出しに行った。場合によったら逮捕してくれるかもしれないけれど、そんな20年も30年も刑務所におるわけないですよね。結局早く出てくるんじゃないか。そしたら結局、あいつのせいでわしは逮捕されたと絶対思うに違いないと思ったら、やはり我慢しようというふうな方向に被害者の人が思うんじゃないかなと。そういう被害者が加害者を訴える際の恐怖心に理解をしなきゃいかんと。これは小早川さんの本に書いてあるんですけれども、私は全く同感でございます。しかし、その一方で、そんなに躊躇ばかりしてたら、ポイズン(有毒性)の段階までいっちゃってもう手遅れじゃないのという問題もあります。そういうことで、例えば、資料1の大阪ストーカー事件の新聞記事の中に、こんな見出しがあるんですよ。「警察へ相談され恨み」「警告が引き金か」と。一方、資料Ⅲの通達の中には、「警察に来られたあなたへ」というペーパーがありまして、そこには、あなた自身の決意と協力が必要ですという言葉が入っております。さっきのお尋ねと似たような質問かもしれませんが、もう一度この辺をお願いします。
小早川   本当に仰った通りで、警察に行った時に、どうしますかという、ここにも添付されていると思うんですけれども、あなた何を期待しますかっていうのが次の次のページにありますよね。警察に取ってもらいたい対応等と、「ストーカー・DV等の対応について」っていうところで。これ記入するわけですね。で、1番が「警察にとってもらいたい対応等」、アが刑事手続、イが行政手続、ウが注意、口頭警告、エが現時点では決心できない。これを被害者に書かせているわけですよ、警察がね。つまり、被害者がどういうふうにしてもらいたいかということを丁寧に聞いてくれるシートなんですけど。これを見ると、やっぱり「刑事手続をとってほしい」というところに丸をうつのがためらわれちゃうんですね。だったら、口頭注意にしようかなと、ウってところに丸をうったりするわけですよ。あるいは、もう何もしなくていいですと。警察に相談に行っても何もしないでくれという被害者は結構多いわけですね。何のために警察に来るのっていうふうに言う人もいるんだけど、処罰して欲しいとか何かそういうことを言いに来たんじゃないと。何かしたら報復が怖いからと。でも、もし何かあった時にはすぐに動いてくださいねという、ある種の情報提供に被害者は相談に行くという感じなんだけど。それだと警察は何もできないわけですから困ってしまうということで、「あなたの意志と協力が必要です」ということは、はっきり言う警察は告訴をしてくださいと。そうしないと警察は動けませんよ、ということをここで書いているわけですね。あるいは、少なくとも警告を申し出してくださいよということなんですが。私も相談に来られた被害者の方には言うんですが、警察には相談に行かなくていいと言うんです、警察にはお願いに行けって言います。相談に行ってどうしましょうと言えば、警察はどうしましょうと言うしかないんですよ。なので、警告してください、あるいは告訴します、処罰してくださいという意志を固めて行きましょうっということで、十分に警察に行く前に証拠を作って、あるいは意志を固めて行かせるということはするんですね。でもすぐ出てきちゃうじゃないかっと言っても、3日間逮捕されていれば、3日の間は考えるスタンスができるんです。貴重な3日間なんですね。で、その後自分が多くの人達の力を得て攻勢に転じるチャンスをもらえて、戦う姿勢ですよ。直接やれっていうわけではなくて、自分たちの体制を整えて、十分に安全も確保しながら、絶対に違法行為は許さないと。自分の家族にもそれは許さないと。犯罪に手は伸ばさせないという硬い決意で立ち向かっていくってことがすごい大事だと私は思っています。またやれば、またやると。またやれば、またやると。どんどん刑期が長くなってきますから、相手が嫌って言うぐらいまで戦い抜くという気持ちのターニングポイントに最初はすべきだというふうに私は考えます。
高原  今回のフォーラムでストーカーを取り上げることになって、ずっと私が考えてきたことの一つが、VSCOはストーカーの問題にどういう支援ができるだろうかということなんです。うちの支援員の大半は女性ですし、男性であったってそんなに腕力があるわけではない。小早川さんみたいに加害者に会いに行ってというのはちょっと無理だなあと。そういう中で、一つ考えられるのが、レベルがリスクかデインジャーか、その辺の段階でVSCOに相談して来てくれたら、少なくとも警察へ一緒に相談に行くことはできるなと。そうしたら、警察官と被害者だけが話をするよりも、VSCOの支援員がそこの間に入って橋渡しをするということも、もしかしたら意外に大きな役割を果たせるかなというふうに思ったりしておりますんで、この辺は実際の支援をする上での大きな課題かなというふうに思っております。同時に、さっき、小早川さんが弁護士さんもうちょっと頑張れと。こういうようなご指摘を受けたのであえてお尋ねしますけれども。小早川さんの本によると、とにかくストーカーというのは常識が通じない人なんだと。あいつは常識がないからけしからんと言って怒って批判をするというのは誰でもできることだ思うんですけれども、それだけだと、批判しているだけだと本当の意味の解決にならないのかなと。小早川さんが言われているストーキング病だとか、ストーキング依存症と、このことにもっと注目しなきゃいけない。そうだとすれば、ストーカー被害者の支援者として、あるいはそれを支援する弁護士として、加害者のそういう心理を踏まえてどのように対応したら良いのか、難しいことですが教えてください。
小早川  まず常識は通じない。間違った認識を持っているわけですから、弁護士がストーカーと対峙した時は常識を言い続けるという役分がすごくあると思うんですね。例えば、婚約不履行じゃないかって、誤って文句を言っていたりする場合は弁護士がそれは婚約不履行に当たりませんとかね、あるいは法律違反をあなたはしているとかね、常識を持っていない相手に対していつも常識の物差しで向かい合っていくということをまず徹底的にやってもらいたいというのが一つです。それをやって気付ける加害者は、さっき言ったように8割ぐらいはいると。認知の歪みがあるので、例えば弁護士と何度も何度もやり取りしているうちに、あっ、自分の方が非があるなと気付ける人は8割ぐらいいるんですね。そこでかなりストーカー被害っていうのはぐっと減ると私は思うんです。ただ何回も何回もしつこいですから、ストーカーって。弁護士の方が嫌になっちゃうんですよ。電話が事務所にかかって来ても取らないとかね、そういうふうになりがちなんです。なので、そこは努力していただいて、もう言い続けるっていうことをやっていただくってことは、実はコロンブスの卵で、そんなくだらんことはやってられないよではなくて、やってるうちに向こうが程度が低くなってくるっていうのが本当にあるので。それも私やり続けているので分かっているんですけど、それをまずやるってことですね。しかし、そうは言っても、パーソナリティーに問題がある非常に変な人達っているわけですよ。そういう人達が、例えば演技して分かった振りをしてとか、色々とだまくらかすというようなことをしたりとかいうことがあるので、信じないという姿勢が必要ですね。言葉を信じないということが必要で、行動をちゃんとチェックするということですよね。それは弁護士さんが行動チェックをいつもできるわけではないので、できる限り周囲の人達と関係を持って、彼の日常の生活であるとか様子を把握するということはやってもらいたいなと思います。
高原  分かりました。一方で会場の皆さんは弁護士さんではありませんけれども、もしかしたら自分のご家族、娘さん、あるいは息子さんが被害者になるかもしれない。そういうストーカー被害者の家族とか、あるいは職場の同僚とか学校という現場において、他の犯罪とは違った対応が必要ではないかなと思うんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
小早川 ストーカーの被害者の家族って、実は自分の家族が被害にあっているということに気付いてない方が多いんですよ。被害者が家族に心配かけたくないとかいう気持ちがあって、あるいは交際の初めの時に家族が反対していたから今さら相談できないとかいうことで、ためらったりしていることが多いんですね。なので、申告を待つということも大事なんですが、何か様子が変だなと思ったら、ちょっと踏み込んで様子を把握するということはしてもいいかなと一つ思います。それからもう一つは、非常に被害者は自罰意識が強いですから、絶対に責めないということですね。被害にあって、お前がそんな男と付き合ってたからとかね、あなたが不注意だからとかいうことは絶対に言わないということです。それはあまりに可哀そうなことなので。
高原   子どもたちも二十歳を過ぎて、当然恋愛するし結婚も考える。そういう中でストーカーの被害にあうこともある。親は聞きたいんだけど、聞いちゃ悪いような気で、なかなか踏み込めないという親子も何件か知っているんですけれども、それは駄目ですね。それだと。
小早川  そうですね。そこは大変なんですが、なるべく早いうちに紹介して欲しいわという感じで会っちゃうことが良いと思いますね。
高原  なるほど。家族内だけでは対応できないから、もっと専門家に相談に行くようにということかしら。 
小早川   はい、その通りです。ありがとうございます。発見した時は、家族の中で収めようって思わないことですね。私もさっき言いましたけど、私も被害者です、まだ。自分の問題解決できてないですよ、もう十何年ね。私はだから、私以外の人にも私のことを相談してて、守ってもらう体制を整えてるんですよ。私一人で我慢してたらとても私の身が持たないし、ひょっとしたらやられてしまうかもしれない。だから皆さんも、もしご家族がストーカーの被害にあっていると思ったら、家族の中で解決しようと思う考えは止めてください。
高原   自分の部下から被害相談を受けた上司とすればどうすればいいですか。
小早川 男の部下がストーカーの被害にあったら、会社は結構つめたくって、お前が悪いんじゃないかっていうことで左遷させられちゃった人もいるんですよ。女の子が会社に来たりとか、留守番電話に色々いれたりしているのでね。それは本当に逆ジェンダーハラスメントみたいなものです。ですので、私生活まで今は会社っていうのはフォローするように、人事の仕事として範疇に入ってますので、十分にそこは事情を聴いてあげて会社として出来る体制を整えようというふうな努力、例えば、押しかけてきたら会社の門の所で制止するような担当者を決めるとか、色々具体的なサポートっていうのはすべきだというふうに思います。
高原  私自身あんまりプロじゃないんですけれども、もう一度そういう時には資料Ⅳを見ていただいて、目の前にいる被害者がリスク・デインジャー・ポイズンのどの段階かということをよく見極めてあげて欲しいと思います。次に、ストーキングによって殺人という、小早川さんに言わせれば1.8%~2%なのですが、そういう最悪の結果を招くことも少なくない。1件でもあっちゃいけない。ところがですね、殺人未遂で終わる事件もあるんです。そうすると被害者の方にはPTSDという重い心の傷が残ります。こういう被害者の方の心のケアということがあんまりまだ明らかになっていないように思うんですけれども、この点どうでしょうか。
小早川   本当に全く手が付いていない所なんだなと思います。今、心のPTSDに対してのカウンセリングを公的な費用ですべきだという議論がされています。問題の一つは、治せるPTSDの専門医っていうものが少なすぎるということで、研修制度があるかと思うんですが。しかし、犯罪被害のPTSDは、他のPTSDとはまた一つレベルが高い、ハードルの高いPTSDですので、早く早急に体制を整える、国として専門医を作るということは大事かと思います。
高原   ただ単に精神科の先生だとか臨床心理士では駄目で。
小早川  私はそれはすごく難しいと思っています。 
高原  最後にですね、最終的には加害者に対する治療がいるのではないか。さっきもご講演の中で色々触れられようとして時間がなくて、途中で終っちゃったみたいですけれども。この加害者の治療とは、具体的にはどんな治療があるのか、あるいはそれは本当に効果があるのかどうか。未知数かもしれませんが、ぜひお聞かせください。
小早川 はい。私は医者でもないのに治療について語るなんておかしいとよく言われます。しかし、さっきのリスク、デインジャー、ポイズンの図もそうなんですが、この間NHKから小早川さんオーストラリアに行ったことがあるのかと言われて何でですかと言ったら、NHKの取材班がオーストラリアに行った時に、やはり三角形の図で、ローリスク、リスク、ハイリスクの3段階にしていて、対応も特徴もみんな小早川さんと同じなんですよと言われたんですよ。小早川さんオーストラリアで勉強したんですかって、するわけないじゃないですかと。しかも私はそんなリスクとかいう言葉ではなくて、デインジャー、ポイズンという独自の言葉を使っているので、私はそれは見てないと言ったんです。なので、私みたいな一介の単に一人の被害者でも一生懸命事態に面していれば何かしら真実に近づけるのではないかと私は思っているんですよ。そこから言わせてもらうならば、加害者の治療については医者にもっと頑張ってもらいたいと思うと同時に、被害者の方の情報提供ってのがすごい大事で、こんな被害にあったんですよとか、あるいは私は加害者側で加害者のカウンセリングもしますので、加害者ってこういう人間性があって、こういうことがあってということを一杯発信してきたつもりですし、仕込みもしなくちゃいけない。そんな中で今定番なのが、警察庁が注目しているのが、認知行動療法というさっき言った認知の歪みを治す。これ端的に言いますと、例えばメールが来ないっていう事象に対して、ある人は俺を馬鹿にしているんだなと思ったら怒る、メールが来ないっていうことに対して見捨てられたんだと思うと悲しくなる。つまり、認識次第で感情が変わるんですね。ところがメールが来ないっていうのを、来ないだけだと思ったら平気でいられるみたいなね。一つの出来事でも認識の仕方によって出てくる感情が違うんです。感情が違うと行動も変わりますってとこで、現実に則した認識の仕方をできるようにしましょうというのが認知行動療法という、ざっくり言っちゃうとそんなもんなんですね。これっていうものはかなり効果を上げているということで、1980年代ぐらいから盛んにやられている、アメリカで特にっていうことで、それをやるっていうことなんですね。それは私は期待したいんです。この認知行動療法は何も精神科医ができるだけじゃなくて、さっき言ったように、弁護士があくなく対話を加害者としてくれれば加害者の方にある種認知行動療法的なカウンセリング効果が高いというふうに思っておるところですね。私がやっている仕事もそこにかなり関わっています。もう一つはさっき言ったセラピーなんですけど、これはちょっと話が深くなるので言いませんが、もう一つ私がさっき講演の最後で言いかけた条件反射制御法という新しい治療法2006年に主に薬物依存症者の治療を手掛けていた医者が発見したんですけれども。要するに、人間の行動というものは思考だけじゃなくて、本能によることによって起きていると。皆さん、自分の行動っていうのは自分が考えながらやっていると思うものの、ほとんどの行動ってのは実は条件反射的にやっていることが多いんだよと。しかも条件反射づけっていう問題があって、例えば、ある人を好きだと思ったらずっと好きという状況で、あの人に会いたいというような感情というか行動に移ってしまう。これはいくら思考で止めても止まらない。これは薬物をやっちゃいけないと思っていても薬物をやりたくなっちゃうという気持ちと、欲求という部分において焦点を当てると同じで、この欲求を失くしてくということは脳に手を加えなくちゃしょうがないところで。言葉に働きかけるカウンセリングでは無理という考えの中で、脳に働きかける療法を平井慎二という人が発見したわけですね。ひょっとしたら、私が思うには、日本には世界に発信する心理療法は、森田療法と内観療法しかないんですけど。ひょっとしたら、この条件反射制御法というのは世界発信できる日本の療法の一つになるんじゃないかなと期待しています。というのは、世界的に、例えば薬物・アルコールは決して治らないというのが定説なんですね。治らないけれども回復はできると。私のところのヒューマニティーの理事は、薬物依存症の回復施設の長である、ダルクという所の近藤さんになってもらっているんですけれども。それは、やはりストーカーには禁断症状とかそういった条件反射的なものがあるので、なんとかダルクの知恵をっていうことでなってもらっているんですけれども、なかなか治らないと。ところが今ダルクの施設で条件反射制御法を取り入れたところ、回復っていうのはどういうことかというと、例えばここに薬物がありますと、回復っていうのは薬物を見たら、やりたいんだけどやるのを我慢できると、強くなりました、耐性ができましたというのが回復と位置づけます。ところが、条件反射制御法をやると、薬物を見ましたというと、薬物は嫌いだとなるんです、もう見たくないと。この違いってすごく大きいんです。我慢をするんじゃなくて、欲求が消える、もしくはもう見たくなくなるという所まで、いわゆる完治を目指した療法なんですよ。これが薬物で非常に臨床結果が良いということで、実は私先週も先々週か、1週間ずっと病棟に行って研修を受けてたんですね。すごく忙しい中で研修を受けていたので、全然連絡を取れなくなって、さっき言ったストーカーの加害者がもっと電話をよこせという事件に繋がってきているんですけど。研修中はもう全然電話に出れないという状況で見てきました。薬物依存症者の方とも話をして、治療法も実際に実践をやり、しかも今実際に入院されているストーカーの加害者の様子も見、話しもし、非常に期待が持てるので、いつかこれは改めて平井慎二先生の方から世の中に発信してもらいたいと。要するに治療法ということに対して、もっと医者たちが、あるいは臨床だけでなくて病理の人達も一緒になって、日本はあまり司法精神科医が少ないので脳の解剖とかもしませんけれども、もっと色んな科学者が百家争鳴のように議論をするステージに入ってもいいんじゃないかなと私は思うんですね。それは、一つは、取り締まりっていうのはしっかりやってくださいよと。警察は警察の仕事をしっかりやってくださいよと。でも、できない部分は専門機関に任せましょうよっていうこの連携。そしてまた被害者支援は被害者支援でしっかりやりましょうよと。この連携をとらないと駄目だと。じゃあ連携をとるためにはそれぞれの機関がしっかりとした独立性を持ってなくちゃ駄目だと。裏返しをすればそうなんですね。ところが今警察は非常に良い面でカウンセリングマインドを持ち出してくれているので、被害者も告訴をためらう等の事情があり、口頭警告を盛んにされるんですね。口頭警告しているところに、加害者が色々話をして僕は実はストーカーじゃありませんよと言えば、警察も「うんうん、うんうん、なるほどね。」っていうふうになだめるという意図もあって、一生懸命対応してくれる警察官であればあるほど取り締まりという側面が削がれていくと。お前はストーカーじゃないかというような話ではなくなってくるというアイロニーが生まれてしまうのでね。やっぱりこれは何が問題かというと、治療者が徹底的に不足している、治療法がないということが問題なので、ここは今後私達を含めて頑張らなくちゃいけないところだとすごく思っています。
高原  私の質問はこれで終わりです。引き続き会場からのご質問に対するお答えをお願いしたいと思います。まず、小早川さんのレジメの中のストーカー化しやすい人の特徴というのがありますけれども、それに関連した質問を3点。まず、小早川さんは、以前、農業や漁業が職業の人の中にはストーカーはいないということを言われていましたが、どうしてでしょうか。次に、加害者になる人はどういう生育環境で育つことが多いのでしょうか。3点目は、ストーカーは病気ってことでしょうか。以上です。
小早川  よく私の発言を丁寧にみてくださっている方がいるんですね、ありがとうございます。確かに私は500人以上の加害者と面談してきましたけど、未だかつて農業やってる人とか漁業やってる人に会ったことがないんですね。大抵さっき言ったように、一流企業の社員だったりとか公務員だったりとか、教師であったりとか警察官であったりとか、そういうのはもう驚かなくなっているんですよ、実を言うと。そういう人達と対極にあって無職でいると、この中間があんまりないっていうのは、要するにいわゆる社会の成功者でない自分だったらもう働きたくないみたいなね、社会に出れば自分が駄目だっていうふうに傷ついちゃうので引きこもっているとかね。でも、ちょっと人と違う所をやはりアピールしたいのでちょっと音楽をやってるとかね。ちょっと人と違うことをやってる、髪形も変えている。ちょっと生活的にはかなり生活力はないんだけど少し変わったことをしてるみたいな人とか、あるいはしっかり生活力があって社会的地位もあるみたいな、両極端のケースっていうのがものすごく多いんですね。しかし一方で農業やってるとか、そういう人がいないのは何故だろうと思うと、今さっき私がちょっと触れましたように、成功していなければ、あるいは尊敬されていなければ生きるのが不安だという人はストーカーになりやすいわけですね。自分に自信がないわけですよ。なので、一生懸命お勉強しました、良い会社にも入りました。でも自信がないから一生懸命勉強もしたし、良い会社に入っているわけで、本当の自信はないわけですよ。本当の自信がある人は何も勉強しなくたって、良い会社にいなくたって自信持って生きてるわけですね。いわゆる自信なんてない、いらない自信ですよね。自信にこだわる人っていうのは、すごい自信が欲しいわけですから自信がないわけですね。なので、両極端があるというのはそれで説明がつくと。そしたら今度は農業も今は起業されてて株式会社になるとか、利益追求とかなるでしょうけど、元々は言ってみれば、自分の評価は作物が評価してくれてる。自分の評価は自分でできる、他者評価は関係ないわけです。しかも運命ということも、運ていうこともよく分かってて、どんなに頑張ったってお天気が悪い日はしょうがないって思える力がある。でも、成功に捕らわれている人っていうのは、頑張ったら成功がないと理不尽だと思うんですね。こういう視野の狭さっていうのはストーカーに通じるんです。これが一つ目の質問の答え。でも、2番目のどういう成育歴かっていうところは今ちょっと言ったことの中に少し含まれてるかな。
高原  既に話の中に出たとは思うんですが、大事なポイントだと思うので、簡単なお答えでお願いします。まず、ストーカーではないかという軽い段階でも相談機関に相談しても良いのでしょうか。次に、ストーカー被害者にならない心得はありますか。3点目は、ストーカーの被害者の方が一番しなければいけないこと、気を付けなければいけないことは何でしょうか。以上です。
小早川   相談は早ければ早いほど良いんですよ。2番目の被害にならないためにということとリンクするので言いますけど、ストーカーの被害にならないためにはそういう変な奴と付き合わないということに限るんですね。ストーカーはある日突然ストーカーになるんじゃないんです。お付き合いしている時から嫌な奴なんです。だから別れるんです。それを怒ってストーキングするという、この歴史があるんですね。だから、根っこを出すためには、そもそもそういう奴と会わなければいいや。で、私はその特徴っていうのをわざわざ書いてきたのは、こういう人とはお付き合いしちゃいけませんよ、ということでAPまで書いてきたんですね。この数が多ければ多いほどやめた方が良いんです。何でこれがリンクするのかっていう説明は今日は短いから時間がないのでできないけど、なるべく会わないこと。で、会ってしまったら我慢しないこと。付き合う時に見抜けませんよ。大体ストーカーって魅力的なんですよ。自分に自信がないから、外見よくしたりとか、エレガントにしたりとかしてますので、騙されちゃうんですね。で、お付き合いしちゃうんですよ。でも、化けの皮が剥がれるのは半年ぐらいです。半年ぐらいでこんな人と別れたいと思うんです、大抵。そこでしっかり別れる決意をしなきゃ駄目なのに、被害者は優しい人が多いから、彼がこんなに変わっちゃたのは私のせいかもしれないなって思ったり、もっと面倒みてあげなくちゃいけないなって思って深みにはまるんです。だから、そこで辛いと思ったらまず人に相談をする。私はあの人と別れたいんだけど、どう思うかしらって相談することですね。で、決意をして早く分かれるということをしないと駄目ですね。だから早めに相談する。うちにはね、私はストーカーの被害がデインジャーになってから相談に来る人が圧倒的に多いんですよ。本当にリスクの段階で来て欲しい。もっと言うならば、別れたいんだけど、どうしましょうというところで相談に来て欲しい。もっと言うならば、こんな男なんだけど別れた方が良いでしょうかって相談に来て欲しい。もっと言うならば、こんな人なんだけど付き合っていいかしらというとこで相談に来て欲しいんです。
高原  次はちょっと専門的な質問で、デインジャーになる段階では、メールや電話番号を変更をすることは危険度を増しますか。被害者ではちょっと良く判断ができないんですけど。という質問です。
小早川   さっきの相談、質問の最後に関わってくるんだけど、一番しちゃいけないことはストーカーの被害に遭わないためにというところでもあるんですけど。まず別れたいと思ったら、別れる意志をしっかり伝えるんだけど、伝えたら最後もう会わないってことですよ。伝えたんだけど、相手が色々言ってくるのに一々向き合っているうちに深みにはまるので、もう今日を最後あなたとは会えませんというところにして、後は代理人をたててそちらに言ってくださいということ。少なくともどんなに多くても3回しか会っちゃいけないと私は言うんだけど、3回会って納得しなかったら、中に誰かに入ってもらうことですね。それで、メールと電話なんですけど、要するにもう電話は苦しいですから電話は受けませんと言って電話番号変えちゃったら良いと思います。ただし、突然変えるんじゃなくて、変えますよって通知して変えなくちゃ、相手が怒るんですよ。あのね、道徳とかすごい敏感なんです、ストーカーって、律儀なんです。失礼だって怒るんですよね。だから失礼のないように変えますって言って変える。で、メールだけは残した方が良いと思うのは証拠になりますから、警察に訴える時の、証拠をしっかり作っておく意味でね。でも、返事をするのは、私の所ですと、私がリスクの段階ではメールでお断りするやりとりする、リスクの段階では私が介入しなくてもアドバイスで結構解決できるんですよ。2カ月以内に解決できるんです。それはメールの文言を1個1個私がアドバイスするんです。彼からこういうメールが来たんだけど、どう答えましょう。大抵皆さんすごい間違ってるんです、その返事の仕方が。今度本当に研修やりたいぐらいなんですが。それを私が全部チェックして私が代わりにメールを書いて、はい、これを送れ、はい、これを送れってやるんですよ。デインジャーに上がらないで解決できますから。でも私に頼めって言ってるわけじゃなくて、頼まないでいいんですけど、自分でやるには勝手なメールの返事をしないで、こんなメール出すんだけどどうだろうねってことを相談しながら、知見のある人にやるってことが一つと、返事したくないならしなくて良いですから、でも証拠として取っておくということですね。
高原 警察による口頭または文書による警告ってあるじゃないですか。その警告によって加害者が反省してストーキングを止めるという割合はどのくらいあるんでしょうか。という質問ですが。
小早川   いや。反省はしないですよ。彼らは被害者意識を持っていますので、警告を受けたら「えっ、俺はストーカーなの。」って言って反発しますね。反発しますけど、捕まりたくないわけですから我慢するんですよ。それで抑止力が効く、そういうことですね。
高原   じゃあ反省しようがしまいが、やれば意味があるんだと。
小早川  もちろんです。警告はしてもらってください、どんどん。でも、なかなか出ないんですよ。それは警告が出るまでに、どうなんだろう、3週間とか4週間とかかかっちゃんですよ、警告出してくださいって言っても。その間にエスカレーションしちゃうのはいけないっていうことで、口頭警告っていう指導警告っていう法的には効力がないけれども、口頭注意をするっていう前倒しになっていくんだけど。これがちょっと問題だと実は思ってて、早めの文章による警告を出してもらいたい。後は、警告の出し方ですよね。警察官によっては、大抵そうなんですけど、しっかり注意をして説明して分かるまで話をして納得させるっていうことをしてくれる警察署ならいいんですけど、そうじゃない所もあるので、その辺が難しいかなというふうに。
高原  別の観点で、ストーカーの心が変わった一言とかフレーズがあれば教えてください。あなたが働きかけたことによって、あなたの一言とかフレーズでストーカーの心が変わったことがあれば教えてください。というご質問です。
小早川  あの、あんまり思い出せないんですけど。でもね、こういうことはありますよ。警察も弁護士も要するに被害者の利益のために行くわけですよね、当然、当たり前なんです、それは。でも、カウンセラーって中立の立場で行きますから。そうでしょ、あなたは悪者ですねって言ったらカウンセリングにならないわけですね。止めてくださいよってことは言いますよ。困っているから止めてくださいね。止めなかったら警察に言うしかないんですよってことは言うんだけど、基本スタンスとしては、あなたも苦しいんですよねって言うんですよ、私は。もう一声、あなたが悪いと言うよりもあなたの病態が悪いんですよねって言うんですね。そうすると自分は悪者だって言われて腹が立っていた、どうしようもないじゃないかって絶望していた人が、えっ、小早川さんは僕を悪人っていうふうに見てないのかな。しかも、僕のこの異常な行動を、実は僕も苦しい、治すって方向があるのっていうふうにチラッと思えるんですね。これが、私が言っている心の方向転換で、この方向転換に最初の電話で行き着いた人はいます、500人のうち何人かは。でも、ほとんどの人は愚にもつかない色んな言い分を、例えば200回とか300回とか聞いているうちに、もう全部その質問がなくなりましたといった時に、それでもなお僕はあの人から離れられないって時に自分で気づきますよね。もう異議申し立てできないところまで行ってるわけですから、なのに離れられないっていった時に、それはあなたの中に病根があるんじゃないの、あなたが問題なんじゃないのということは必ず言いますよね。そこで方向転換を図るんですよ。これがストーカーの加害者のカウンセリングの一番の肝であり、方向転換できるかできないかのポイントです。
高原   最後に小早川さんご自身は誰かに助けてもらいたいと思ったことはないですか。というご質問ですが。
小早川  そんなのはもう山ほどありますよ。私弱いです、ものすごく。もうねえ、本当に。こうやって人のことはできます。人の加害者は怖くないんですよ。自分に自罰の気持ちがないからね。何を言われても怖くないですよ、そんなに。でも、自分の加害者は超苦しいです。自分と歴史があるから。そのぐらい私は弱点を持っているんですね、弱いんです。だから私の代わりに誰かやってくれって今だって思っていますね。でも沽券に関わるので自分でやってるんです。
高原   実はまだまだご質問をいただいているんですが、時間の関係でここで打ち切らせていただきますが、皆さん、ご協力本当にありがとうございました。小早川さん、ありがとうございました。

 
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公益社団法人 被害者サポートセンターおかやま  (VSCO(ヴィスコ))
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毎週月~土曜(午前10時~午後4時) (祝日・年末年始は休みます)  相談・支援は無料、秘密厳守