大阪高等検察庁 田中嘉寿子検事
被害者が抵抗できない理由は色々ありますが,被害者が生きている事件はプライバシーに配慮して報道されないので,報道される性犯罪事件は,被害者が死亡したケースが多いのです。そのため,被害者は,性犯罪に遭うと殺されるというイメージが強くて非常に抵抗するのが難しいです。
発生件数としては性犯罪よりDVの方が多いかもしれません。DVの被害者に対しては,「なんであんな暴力亭主から逃げないんですか」と聞いてしまいたくなりますが,そう聞くと,二度と被害者は警察や検察庁に来なくなってしまいます。「あなたが逃げるのをためらう原因は何ですか」と聞けば,子どもとか生活とか体面とか,何か答えが出てくるんです。すると,子どもにとっては,DVを見せるのは心理的虐待ですから,子どものことを考えたら別れた方が良いです,といった建設的な考えも出てきます。支援する方も,質問で被害者を傷つけない配慮が必要です。
時間がオーバーしているので,ここでいったん切らせていただきます。
講演全文 その1 はじめに
その2 性被害者に起こっていること 正常性バイアス その3 性被害者に起こっていること 凍り付き症候群 その4 性被害者に起こっていること 従順・懐柔反応 その5 性犯罪の加害者 その6 性犯罪の捜査 その1 その7 性犯罪の捜査 その2
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