支援の事例 小学生への性被害
●小学生Cちゃん
Cちゃんは、家の近くのお店に、近所のおともだちと一緒にたびたび遊びに行っていました。お店をひとりで経営しているDは、子どもたちが来るとお菓子や小銭を与えたりしていました。
「あのお店で写真を撮ってもらうと、お菓子やお金をくれるらしい」といううわさが広まり、それを耳にした学校が、警察に通報しました。
Dは、子どもの全裸の写真を自分のパソコンに保存していたため、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反」で逮捕されました。
警察からの連絡でVSCO とつながりました。Cちゃんのお母さんは、最初この事件を知ったときは「お金をもらって写真を撮らせたCちゃんが悪い」と、Cちゃんの方を責めていました。事件発覚後、Cちゃんは、ストレスからか喘息を発症しました。「弁護士に頼むと、お金がかかる」と、Cちゃんのお母さんは心配していましたが、VSCO
は、犯罪被害に精通するVSCO の協力弁護士にお願いし、費用は、法テラスで負担してもらいました。
「裁判のことはよくわからない」と言うCちゃんのお母さんに、弁護士や支援員は、裁判のことなどを何度も丁寧に説明しました。支援員は、
「悪いのは、巧みに幼さに付け込んだ加害者で、C ちゃんは悪くありません。
犯罪被害にふたをしてしまうよりも、ふたをあけてまわりがケアをしていくことが、C ちゃんの回復につながります。
お母さんが逃げるのでなくて、裁判の中でめいっぱいできることをしていくことで、事件のこともわかります。
そうやっていくことで、これから思春期になるC ちゃんにも向き合うことができると思います」と、お母さんを支えました。支援員は、弁護士相談や検察庁にも付き添いました。
D の裁判の時、C ちゃんのお母さんは、法廷で自分とC ちゃんの気持ちを自分の口から話すため、「※①被害者参加制度」を利用することにしました。※②意見陳述制度での意見陳述も行いました。「意見陳述書」の作成は支援員が手伝いました。法廷では、ついたてで傍聴人や加害者から見えないようにして自分とC ちゃんの思いを語りました。D は、実刑になりました。
C ちゃんの母親は、D からC ちゃんを守るため転居しました。「支援してもらって、裁判もできて良かったです」と、言われました。
●小学生Eちゃん
小学校高学年のE ちゃんは、小学校の担任教師F から約3 か月にわたって性暴力を受けました。E ちゃんは、友人に被害を打ち明け、友人の母親から学校の知るところとなりました。
当初、E ちゃんの両親は、加害者の名前をマスコミに公表してほしいと要望していました。社会的な制裁を加えたかったからです。VSCO の協力弁護士は、加害者の名前が分かると学校が特定され、E ちゃんの名前も分かり、マスコミが家に押しかけたりするので、マスコミには公表しない方が良いとのアドバイスをしました。警察と相談して、一切マスコミには公表しないことにしてもらいました。学校に対しても、ほんの一部の関係者以外に事件を知らせないように要求しました。
E ちゃんの両親は、迷ったあげく勇気をだして警察に相談し、刑事事件となりました。当初、学校側は、警察への通報をためらっていました。学校・教育委員会が、E ちゃん家族の意向を無視して警察に届け出なかったことに、E
ちゃんの両親は、大きなショックを受けました。VSCO の協力弁護士を通して学校・教育委員会と何回も交渉した結果、新しい担任の先生に対する信頼が回復し、学校の被害者の気持ちに対する理解が次第に得られるようになりました。しかし、E
ちゃんは、現在でも付き添いがないと学校へ行けない状態です。
F の裁判では、E ちゃんの母親とVSCO の協力弁護士が※①被害者参加し、母親が※②意見陳述をし、協力弁護士がF に対する証人尋問・被告人質問・被害者論告(被害者が、意見を述べること)を行いました。裁判で、F は、「強制性交等罪」で、懲役5 年の実刑となりました。
※①被害者参加制度
被害者などが、刑事裁判で、検察官の横に座り、証人に尋問を行ったり、被告人に意見を言うことができる制度
※②意見陳述制度
被害者などが,被害についての今の気持ちや事件についての意見を法廷で述べる制度。