支援の事例 中学生への性被害
●中学生Gさん
中学生のG さんは、小学校高学年の時から義理の父親に身体を触られ、レイプされそうになりました。G さんは学校の先生に訴え、先生が児童相談所に通報し、G
さんはすぐに児童相談所に保護されました。義理の父親は逮捕されました。警察から勧められて、G さんのお母さんがVSCO に電話をかけてきました。
G さんのお母さんは、事件を知って住んでいた家を出てアパートを借りました。G さんは、児童相談所からお母さんのところに帰っても、学校へ行けないことが続きました。VSCO
の支援員は、G さんに会うため、お宅を訪問しました。G さんは常に頭痛があり、男の人が近くに来ると義理の父親のように思え、緊張してしまいます。夜も眠れないし、他人に会うのも嫌になりました。「自分は他の人と違うのだ」と、思えてしまい、気持ちが沈んでしまいます。精神科の受診が必要なので、VSCO
は、犯罪被害に精通した精神科を紹介し、受診につなげました。経済的にも困窮していたため、※①VSCO の犯罪被害者支援金で、診察代、薬代、交通費を負担しました。診察には、VSCO の支援員がいつも付き添いました。お母さんは、義理の父親の裁判を傍聴しました。VSCO
の支援員は、お母さんに付き添いました。傍聴ができないときは、VSCO の支援員が代理傍聴し、裁判の様子をお母さんに伝えました。
母子家庭になってからの行政の手続きが、煩雑で時間がかかりました。市役所の窓口にVSCO の支援員が付き添い、そのサポートも行いました。
G さんは、今は元気に高校へ進学しています。
※①VSCOの犯罪被害者支援金
(精神科の費用)
(1人当たり1回5,000円で、30,000円まで。資力要件有り)
●中学生Hさん
中学生のH さんは、学校の帰りに待ち伏せしていた同級の加害少年I から、公園のトイレに連れ込まれ、「殺すぞ」と脅迫され、目隠しをされたうえ強制わいせつ行為をされました。
加害少年I は、事件直後逮捕され、家庭裁判所に送られました。H さんの母親が、VSCO に電話で相談してきました。VSCO の協力弁護士が、学校と教育委員会に手紙を出し、学校と教育委員会はどのように対応するのかの質問をしました。学校からは連絡があり、校長先生、副校長先生、教頭先生が協力弁護士のところにやってきて、今後の対応について話がなされました。H
さん及び両親は、本事件により大きな精神的ダメージを受け、今後の不安も大きいことから、VSCO の協力弁護士は、学校を通して加害少年I 側に次の要望をしました。
① 被害少女と日常生活でも会わないようにしてほしい
② 県外の学校に転校してもらいたい
③ 被害少女が通う高校と顔を合わさない高校へ行ってもらいたい
④ 被害少女と顔を合わさないように住居を変わってもらいたい
I 側からは、しばらく経って、代理人弁護士を通してI の父及び祖母の謝罪がなされ、できるだけ顔を合わさないように努力するとの回答がありましたが、具体的な回答はありませんでした。また、I
は、非行を否認したままでした。
少年事件については、刑事事件のように被害者参加制度はないので、被害者参加制度により被害者が意見を述べることはできません。しかし、少年事件においても、家庭裁判所に対して被害者が意見を述べる3つの方法があります
① 審判の場で裁判官に対して意見を述べる
② 審判以外の場で裁判官に対して意見を述べる
③ 審判以外の場で家庭裁判所調査官に対し意見を述べる
H さんの両親は、③の方法により、VSCO の協力弁護士立会のもとで家庭裁判所調査官の調査で意見を述べ、さらに調査で述べなかったことについて、詳細な意見補充書を提出しました。
加害少年に対する審判の結果は、被害者に対しては通知されません。したがって、審判がいつなされ、審判の内容がどのようなものであったかについては、被害者であるHさん・両親・代理人弁護士には分からないのです。そのため、審判結果がどのようなものであるかについて被害者側は大変不安な時期を過ごすことになります。
そこで、VSCO の協力弁護士から家庭裁判所に対し、※②審判結果等の通知申出をした結果、加害少年に対する審判結果は、「少年院送致」でした。しかし、加害少年は、非行を否認しており、審判に対する不服申立て(抗告)をしました。抗告を受理した裁判所は、抗告を棄却しました。少年は、さらに最高裁判所に対し不服申立てをしましたが、最高裁判所も棄却しました、
少年院送致された少年が、少年院においてどのような処遇をされているのかを知るために、少年鑑別所に対し、※③加害者処遇状況等通知希望申出をし、加害少年の処遇の状況、退院の時期等を知らせてもらいました。※①審判結果通知制度を利用し岡山家庭裁判所に審判の結果を知らせてもらいました。このため、H
さんと両親は心の整理と対応ができました。現在、H さんは、元気に高校に通っています。
※②審判結果等の通知申出 審判結果等通知制度
被害者やご遺族等の方々の申出があって,少年の健全な育成を妨げるおそれがない場合に,家庭裁判所から少年の氏名や審判の結果などを通知するものです。
※③加害者処遇状況等通知
加害者が少年の場合、被害者等の方々が申出をすることによって、少年院から少年院在院中の処遇状況に関する事項が、地方更生保護委員会から仮退院審理に関する事項が、保護観察所から保護観察中の処遇状況に関する事項等がそれぞれ通知されます。