「ストーカー被害から命を守る」講演全文

NPO法人ヒューマニティ理事長 小早川明子さん
小早川明子さん最新の著作『新潮新書 ¥720(税別)もご参照ください


 
こんにちは、小早川明子です。今日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。岡山市の取り組みを聞いたり、VSCOの取り組みをお聞きしましたが、岡山は本当に暖かい県だなあってつくづく思いました。犯罪被害者支援センターいくつかとお付き合いもありますが、ここまで丁寧にやってらっしゃる所を私は他に知らないんです。被害者の受けた心の傷への配慮の深さや、具体的な方針建てであるとか、付き添いであるとか、非常に感銘を受けてます。また、行政の力っていうのも、今改めて説明を受けて、すごい資源なんだなと思いました。ぜひこういった岡山市の取り組みを他の自治体でもやってもらいたいと思いながらお話を聞きました。

ストーカー小早川明子さん講演 私は何かこうストーカー対策の専門家のように言われてまして、実際、専門家なんですが、実は専門家である以前に私は単に一人の被害者に過ぎないんですね。本当に苦しくて、どうしたらいいのか分からなくて、相手と戦っているうち何となく今に至ったというのが本当のところです。実際まだ、私の加害者は私の周辺をうろついておりまして、先月も地元の警察署に、私はその男と一緒に出向いて大喧嘩をしました。男が押しかけてきたので警察に引っ張って行って被害届を出す寸前までいったのです。その男は私が15年前に今の仕事を立ち上げるきっかけとなったストーカーで、命こそ失うことはなかったけれど、私は仕事を失い、家族を失い、そしてまた心を失いました。その時にやけばちになって、もういっそ死んでしまったほうがいいかなって思ったんですが、たまたま同郷の社長の経営する警備会社がありまして、私と私の会社のボディーガードをしてくれて、また社長が相手と交渉して解決してくれました。解決といっても一旦は相手が諦めたというだけで、性格が変わるわけではなかったので、これからも被害が続くであろうという以上は、私も自分を守るためにもっとスキルアップをせねばと思い、同時に、私以外でも苦しんでいる人がいれば少しでも役に立てればと思って商売替えをしました。当時の私は経営者でしたので、人の役に立つっていうのは対価をいただいてやるもんだというふうな頭がありまして、サービス業の感覚で株式会社ヒューマニティという名前で始めたんですけれども、やってるうちに、これはもう利益を生むようなものでは全くないとすぐにわかりました。お金を損することばかりで株主に対して責任が取りきれない。ですので、会社組織をNPO法人に変えて、それからは好き勝手にやらせてもらっています。

 被害者である自分が、こういった所で皆さんと一緒にお話ができる、勉強させてもらえるというのは非常に心強いんです。でも、じゃあ何で小早川さんは人のことばっかりやってるのに自分の問題解決できないのって言われるのが一番苦しいんです。が、これがストーカー問題の特徴なんですね。私でさえ自分の問題は解決できません、できていません。私は人の問題に介入してアドバイスをしたり、コンサルをしたり、中でも一番のポイントは加害者に会いに行くという介入をすることなんですが、そうやって解決に至らせるというか、やってきたのですが、自分の問題には介入ができませんし、何一つ全然できない。

  私がストーカーの被害者になった時に一番思ったことは、「相手をいくら捕まえてもすぐ出てきてしまって、また狙われる。一生逃げなくちゃいけないんじゃないか。誰か私の代わりに相手と会ってもらいたい、できれば相手が考えを変えてほしい。もう私を狙わないように、そういうふうに考えを変えてほしい。」ということでした。相手からの攻撃が辛すぎて、猫でもいいから私の代わりに相手と会ってもらいたいと思ったんですね。ですので、今、私が力を込めているのは、被害者さんが相談に来られたら加害者さんと会う、被害者の盾になることです。ちょっとリアル感を持って話をするならば、そうやって介入するもんですから、当然加害者と私の間には軋轢が生じます。本にはあまりそういう軋轢のことは書かなかったんです。書くと、私と同じような仕事をしようという人がいなくなっちゃうかもしれないから。実際のところを少し言いますと、最近も私の電話は全然出られない状況だったんです。各方面に迷惑をかけました。小早川さんに何度電話してもつながらないじゃないかと。なぜなら、まるまる二日間、夜中まで間断無く電話が鳴り、メールがきて、電池パックが熱くなって充電するのも不可能になるぐらい私と軋轢を起こしている加害者からの連絡があったからです。何で着信拒否しないのかっていうと、着信拒否をしても電話番号変えてきますからいたちごっこになっちゃうんですね。また、着信拒否をしてるっていうのは私の沽券に関わるって気持ちもあります。「逃げていない、無視をしているのだ。」というメッセージを伝えたいので、私はじっと耐えてガンガンガンガン鳴っている電話機を布団の中に押し込めたりとか、トイレに置いたりとか、色んな工夫をして聞こえないようにするのです。時々、チョロチョロ見ると、色んなメールが入ってる。小早川明子さん ストーカーから命を守る
 この男性はどういう人かっていいますと、私はある被害者の代わりにこの男と会いました。別れさせたといいましょうか、引導を渡したんですね。その時は納得を一応したんですが、その後、心のケアをといいましょうか、再犯を防ぐため、ストーカーの被害者を守るためにですけど、加害者のカウンセリングを始めたとたん、私を母親のように思っちゃった。だから何でも私が言うことを聞いてくれるだろうと思い込んで、私に甘えることができるんじゃないかって思ってしまったのです。そういう想いを持つ加害者って結構いるんです。
通常、そういう時は、私はそれを段々と手離す作業に入ります。つまり徐々に冷たくしていくっていうことをするんですね。常識を持って、これ以上電話するなとか、夜中は電話を取らないとか、一日に一回しか話をしないとか、そういうふうに段々と一人でも耐えていけるという時間をつくらせていく。つまりそのぐらいにストーカーの加害者って、一人ぼっちでいるのが我慢ならないぐらい寂しいんですよ。いつも誰かに話を聞いててもらいたい。それは本当は被害者の女性の役割になるのですが、その人はいなくなっちゃってるわけですから、代わりに私が介入すれば電話やメールが山ほど来るわけですね。あたかも禁断症状に似てますので、後で少しお話しますけれども、それがエスカレーションしていくと、とんでもないことになっていくわけです。私は制御、ブレーキを搭載させるように介入していきますので、この男にも冷たくしたわけですね。
 そうしたところ来たメールを一部読み上げます。「電話に出ろ。お前は俺を追い詰めた。俺の夢を潰した。カウンセラーをやめろ。一生怨んでやる。俺を訴えろ。刑務所を出てきても必ず潰してやる。明日警察に被害届を出せ。必ず会いに行くからな。散々馬鹿にしてくれたな、復讐してやる。決着をつけるからボディーガードを付けとけ。俺の人生を返せ。絶対に許さない。俺をと ことん侮辱した。あやまれ偽善者。」と、まあ延々とあるんですけど、電話を取っても同じようなことを言われるわけです。もう慣れましたけれど、最初は辛かったですね、こういう言葉を投げかけられると。これは男性だけじゃなくて、女性の加害者も半分いますが、女性の加害者はもっと酷いことを言います。女性として徹底的に私の息の根が止まるようなことも言われます。実は、この種の苦しみをそれまで被害者が受けてきたってことなんですよね。どんなに被害者が心を殺されているのか分かりますよね。ストーカーの犯罪の殺人や殺人未遂、傷害などの重要な犯罪は実は2%にも満たないですね、全認知件数の98%以上は命まで落としてません。重大事件に遭ってはないわけですね。ところが、警察に相談に行く2万人の人っていうのは、ほとんどこういう暴言を吐かれたり、実際明日来るんじゃないかと怯えたり、本当に会社に来られたりというような被害に、精神的被害にあっているんです。今日は「ストーカー被害から命を守る」というテーマなんですが、命の中には心も入っているわけで、心を殺されてしまったら立ち直るのが大変なんです。被害者の心のケアは大変な仕事です。言葉を投げつけられるだけじゃなくて、私と同じように仕事をやめざるをえなかったとか、転校しなくちゃいけなくなったとか、そういった実際面での損失っていうのも起きています。そういった実際面での損失っていうのも起きています。そういったことも被害だと考えたら、ストーカー問題を本当に解決するっていうのは、命を守るのは当然として、プラス本当にその人らしい人生を送らせていくような支援をするっていうことではないかなと私は思うんです。
小早川明子さんストーカーから命を守る この男はこんなことを言いながら、時々心が反転します。つまり、こんな酷いことを言っているのに実は苦しさもある。このメールを少し分析していけば分かるんですけれども、こんなことを言いながらでもですね、彼が言っているのは、「逃げるな。」とか、「この後、俺をどうするのか。加害者は苦しいんだよ。俺を放置するなら加害者対策なんてもう止めろ。中途半端にするな。徹底的に対応しろ。逮捕されても俺は必ず行くんだからな。」と、要するに、もっと俺は苦しいんだから面倒をみろってことを言ってるわけです。ですから、私は時期を見計らって電話を取り、カウンセリングに通うことを勧めました。でも、「カウンセリングを受けたいなら私に謝罪すること、しなければ私はこのまま脅迫で警察に被害届を出す。」と言ったら、「何だ、カウンセラーが被害届を出すのか。」と反論するので、「当たり前だ。私はあんたの被害者なんだ。カウンセラーである前に私は人間なんだ。私はこんなに苦しいんだから、傷ついているんだから、あなたが謝って誓約書を入れなければ、私はあなたのカウンセリングはしない。」っていうふうに言いました。要するに、加害者は甘えてまして、「弱いんだから。」とか、「加害者にも痛みがあるんだから。」とか、「カウンセラーなら治せよ。」って言うんですね。そういう相手には常識を持って「勘違いするな。私は加害者を治すためにカウンセリングをしてるのではない。」ってことを言わなくちゃいけません。私は加害者のためにやってるわけじゃないです。被害者を救いたいから、加害者を変えようとしているだけなんです。「私は本当はあなたのカウンセラーはしたくないよ。何故なら、私が被害者だから。私は、自分を守ることはできる、ボディーガードをつけることもできる。ただ、私以外の被害者は初めての経験で本当に辛いの。私はそういう被害者のために介入をして、加害者のカウンセリングをするの。今、被害者は私、何であなたのカウンセリングをしなくちゃいけないの、しないわよ。あなた苦しいんだったら、私にカウンセリングしてってお願いしなさいよ。」って話をしたわけですね。そこで彼は、「あっ、本当に小早川さんは冷たい人だな。」って分かったんです。それでいいんです。私は温かいわけじゃないんです。私に救けを求めるしか、自分の犯罪性を止めることはできないと分かる。さもなければ私が本当に警察に行くと彼は思ったわけです。その二者択一に思い至り、でカウンセリングを受けると決めたのです。このようにしてカウンセリングが始まりました。こういう苦痛で危険を伴う介入によって、ようやく始まるカウンセリングですが、よく加害者にカウンセリングをするとか、認知行動療法をするとか言うけれど、実際にその気にさせるための現場はこういうものです。加害者のカウンセリングをしますとお店を広げて彼らがやって来るか、素直にお願いしますって言うか、もう全然違うってことなんです。そういう加害者はもうすでに半分は治っています。
 私は被害者のために加害者のカウンセリングをしてるんですが、どうも取り上げられ方としては、「加害者も守りたい」というふうに、さっきの新聞なんかに出ちゃうもんですから、ちょっと困っちゃいます。加害者を別に守りたいなんて全然思ってないんですよ。加害者は責任を取るべきだ。ただ再犯を防ぎたいんですね。あるいは、重大犯罪を犯す前に治ってもらいたいんです。というのは、ストーカー犯罪は従来の犯罪とは少し違うところがあって、加害者が本当に加害意識を持っていないことが多いんです。自分は被害者だと思い込んでいるところがあるんです。これはストーカーの加害者の特徴なので、皆さんがひょっとして今後、ご家族がストーカーの被害にあったりする時に、あるいは自分の子どもが加害者になっちゃうかもしれない時に知っとくべきことだと私は思っているのですが、さて、私はいつもレジメを作るんですがレジメ通りになかなかいかなくて。皆さんとお会いして皆さんのお話を聞いたり、あるいは、こうやって顔を見たりすると溢れてくる思いがあるので、その場の雰囲気でしゃべっちゃうんですね。なので、後で言い足りないぞとか聞き足りないぞってところがあればですね、どうぞ質問用紙に書いてもらうということでお願いしたいと思うんですね。

小早川明子さん加害者の特徴 ストーカーの加害者の特徴の話をします。皆さんの資料の中に、ストーカーの加害者の特徴の1,2,3を入れてると思うんですが、一番筆頭が「ストーカーは被害者意識を持っている」で、彼らは、『確固たる心理的動機があり、正当性を妄想的に信じ込んでいる』これっていうのは、多くの他の犯罪とは少し違うところで、被害者加害者の関係っていうのが、私の知っているストーカーの被害者と加害者の関係っていうのが、多くは元付き合っている人が多いんです。8割ぐらい。後はまだ付き合ってもいない、知り合ったばかりとか、あるいは全然面識もないとかありますけれど、大抵はある程度付き合っているんです。その二人の密室の関係の中で起きたことっていうのは第三者にはうかがい知れないところではあるのですね。被害者の話を聞いてみると、「別れたいと言うのに別れてくれない。」っていうのが大抵パターンとしてあるんです。つまり、別れを納得しない、とんでもないことだっていうふうに相手がどんどん文句を言ってくる。これがキツイという相談がほとんどなのですね。逃げても逃げてもメールがやってくる、電話がやってくる、さっきのような言葉を言われる、実際会社に来るんじゃないか、学校にくるんじゃないかっと怯えて暮らさなくちゃいけない。夜も眠られない。そのうちにご飯も食べられなくなるし、本当に病気になっていっちゃうっていうところで相談に来る。良くわかっていない人に相談すると、被害者の話を聞いて、「あなたにも悪いところがあったんじゃないの。」とか、「こういうふうに相手に言ったらいいんじゃないの。」とか、「もっと強くなりなさい。」とか、言われてしまう。私も自分が被害者の時、たくさんのカウンセラーに相談に行きましたが、言われることは大抵そんなところだったんです。「様子を見なさい。」とか、「我慢したらどうですか。」とか。でも、人の心って筋肉じゃないので鍛えても強くならないですよね。私は自分の心を鍛えようと思ったけど、鍛えられなかったです。
 私はさっき慣れちゃったと言いましたけど、慣れたのではなくて、私は今危険度が分かるので、暴言自体は胸を突き刺されるくらいに痛いんですが、この男は本当に私を殺すつもりがないぐらいの見極めがつくようになったので、むやみに怯えないですむようになってるわけです。ところがまだこの仕事を始める前の私は分からなかったです。その時は、本当に殺すと言われたら明日殺されるんじゃないかと思いました。会社に火をつけると言われたら火をつけられるんじゃないかと思いました。実際にその男は会社にやって来て、私の部下を殴ったりとかしたし、会社の中の物、備品を壊したり、椅子を投げつけたりとかするわけですね。わたしは相手が電話をかけてくると、電話を切れないわけです、怖くて。切るとやってくるんじゃないかと思って。一晩ぐらい持ってたこともあるんですけれど。昼間だったら、今から行くぞと言われたら、まず社員を全員外に出して喫茶店で待っててもらって、傷つけられたら困りますから。私が一人じっとこうやって待ってると、仲間を連れてやって来て暴れる。すぐ110番するんだけど、警察官がやって来る時にはもういなくなってたりとか、間に合っても警察官は私服でやって来て、「どうしたんだい。」と言い、相手は、「民事なんですよ、お金貸してるんですよ、この女に。」とかニコニコしだして、全く話にならない。そんなある日、いよいよ「火をつけるぞ。」と言われたところで、本当に火をつけられたら困ると思い警察署に行くと「火をつけられてからいらっしゃいよ。」言われました。しょうがないのでボディーガードに頼んだわけです。

 この15年で自分の身を守ることはだいぶできるようになりました。そういう意味では無暗に恐れないですが、ほとんどの被害者は怖いんですよ。なのに、「あなたが強くなりなさい。」って言われたりとか、「様子を見なさい。」って言われたり、あるいは「警察署に行ってはどうですか。」とたらい回しをされるというのは、これは本当に気の毒です。なので、私はすぐに介入するようにしてるんですね。まず、その相手に連絡を入れて、そういうこと止めなさいよと。こんな強い口調じゃありません。丁寧にまずは電話をして、「すみません、今あなたのお付き合いされていた誰それさんが私の所にいらっしゃってるんですけれども、大変あなたとの問題で苦しんでらっしゃいます。双方の話を聞かないと私も間違えますから、あなたのお話も聞きたんですけれども、お話聞かせてもらえませんか。」と言います。すると、どのくらいの加害者が「じゃあ話します。」と言うと思いますか。私は初め、被害者側の人間だから相手が私と話をするはずがないでしょっと思ったんですけど、実に89割は喜んでやって来るんですよね。それは彼らが自分は悪くないと思っているからです。「俺の方こそ実は言い分がありますよ。」っていう感じなんですよ。あるいは「私の方こそ実は苦しんでるんですよ。」って。「僕の苦しみを相手に言おうとしても電話には出てくれない、メールにも返事をくれない。困ってます。」と。だから、「わかりました。あなたの言いたいことは私を通しますので、直接被害者というか、相手側に連絡を入れるのをやめてくれませんか、嫌がってますよ。そしてまた眠れないような状況で精神的にもおかしくなってますから。」と頼みます。たいていは「あなたが伝えてくれるならやめましょう。」と、一旦やめてくれるのです。被害者はこの一旦が嬉しいんですよ。ほんのちょっとでも、ああ今日電話が来ないっていうのでもう喜んでくれます。安心して、携帯電話がビーンと鳴るのに怯えないでもすむと。その一時の安堵感が、私に対する信頼につながってくれます。
小早川明子さんストーカー講演ルネスホール 私が会った加害者は、「自分の方が正当性があって、ストーキングと言われるけど、実はこれは正当な権利の行使なんです。」みたいなことを言います。結構弁も立ちます。頭の悪い人がやってるわけじゃなくて、私が会ったストーカーの加害者っていうのは、実は弁護士さんとかいらっしゃいますし、精神科医もいらっしゃいますし、もう偉い人が結構やってるんですよ。半分以上がしっかりした一流企業の社員だったりするんです。有名大学の学生だったりするんですよ。皆、相手が悪いっていうことを言うのに非常に能弁なんです。かたや被害者の方は、自分はひょっとしたら悪いことをしてるんじゃないかっていうふうに自分を責めるような性格があるんですよ。「だってあの時、あんなふうに言っちゃったからな。」とか「私の不用意だったからな。」とか、「そういえば私も世間的にちょっと悪いことしちゃったからな。」って、自分のちょっとしたミスを被害者は、私もそうだったんですが、すごく大きく捉えているんですね。それは何故かというと、長いこと加害者に「お前が悪い、お前が悪い。」って言われ続けているからです。だから、SOSを言うこともためらっているわけですね。それで、おずおずと私の所に相談にくる、辛いあまりに。その時に「私は本当に被害者なんでしょうか。」って言う人が結構いるんですよ。だから「えー、あなたは被害者ですよ。連絡欲しくないって言うのに連絡きてるんですよね。これって法律違反なんですよ。あなたがもしも道義的に、倫理的に少し悪いことをしてたからといって、犯罪の被害者になるいわれは全くありません。」と。「だからあなたは被害者ですよ。」と言うと、本当に喜んでくれますよね。

被害者は、まず自分が被害者だという立場をしっかりとることです。この時、自分がまずどういうポジショニングの被害者なのかっていうところを確定しなくちゃいけません。お配りしている高原先生が作ってくれた資料、ピンクの資料の所に、二つの三角形を提示しますが、
小早川明子さんストーカー被害度  
 
小早川明子さんストーカー危険度
まず法律的にいうと、どういう被害者なのか、それを分かるために、私は3つのレベル、マナーレベルと民事レベルと刑事レベルと分けて見せます。あなたの被害はマナーレベルの被害なのか、それとも民事の慰謝料請求ができるような、つまり実損害を与えられている被害なのか。はたまた、刑事という、さらに悪質性の高い、刑罰法令で犯罪と定められているような犯罪の被害者であるかを見定めます。ストーカーと一言で言ってもグレードがあるので、どのポジションなのかってことをまず確認するんです。そうすると、自分はマナー程度だと思っていた人が、実はひどい刑事犯罪の被害者であったりするってことが分かったりするんです。そうすると、じゃあどうします。「あっ、私はこんな犯罪の被害者だったらね、もう絶対に相手を処罰したい。」っていうふうに心を強く持つ人もいます。
 その下の方は、加害者の危険度をグレード分けしたものです。被害の程度とは別に、加害者の内面の危険度を量らないといけません。私はむやみやたらに連絡を入れているわけではないんです。つまり、介入するっていうのはかなり危険な行為ではあるんですよ。相手がどういう心境でいるのか、どういう心の逼迫性、危険性を持っているのかを見極めなければ、介入は危険です。安易にできることではないって覚えておいてください。私は15年やってきてこのランク付けは自分で考えたんです。リスク、デインジャー、ポイズン、だいたいこのポジションを段々エスカレーションしていくのがストーカーの加害者の心理的特徴です。

加害者の特徴の2番目の『相手を一方的に追い詰め、苦しめていることを自覚しながらも相手に好意を持たれる望みをかけている。』彼らは相手に望みをかけてますので、望みをかけている間は、まずリスクの段階ではお願いするんですよ。「もう一遍やりなおそう、帰って来てくれ。」と。まあ、異性にフラれて「分かりました、ありがとう。」なんて爽やかに去っていく人はいないと思いますよ。誰でも最初はちょっとはぐずりますよね。「えー、もうちょっと、もう一遍考え直してくれないかな。」と言います。でもこれが2カ月も続いたらおかしいと思ってください。2カ月以内で納得する人はまあ普通と思っていいですよ。でも2カ月をこえてまだぐずって、もう一遍もう一遍と言っている人はほとんどデインジャーになります。デインジャーとはどういう人かって言いますと、今度はお願いではなくて要求なんですね。「お前は俺んとこに帰ってこなくちゃいけない。話し合わなくちゃいけない。謝らなくちゃいけない。責任を取らなくちゃいけない。俺の心のケアをしなくちゃいけない。」っていうような、無理難題と言いましょうか、全く正当性のないことなんですが、俺にもっと謝れとか、責任を取れとか、約束を守れとか、誠意を見せろとか。実は今言ったその言葉は、私が会った加害者のほとんどが使う言葉です。共通言語って言っているんですが、要するに被害者意識を持っているっていうことですね。「じゃあ何で彼女があなたに謝らなくちゃいけないの。」って聞けば、取るに足らないことだったりするんです。例えば、「一緒に住んでいる時に俺は毎日布団をトイレの側に敷かれていたと、なのにアイツは窓際に布団を敷いていた。俺は馬鹿にされていたんだ。」とか。急にそんなこと言い出すんですよね、別れ際に。つまんないことなんです。あるいは、「デートの費用は全部俺が持っていた。」とかね、おごってやるって言ってたのに。「お前の家族は俺を見た時に見下していた。『ご職業なんですか』と聞かれて職業を言ったらため息をついたような顔をした。あれは俺を馬鹿にしたんだ。」と。そういう過去の不満を蓄積していて、一気に噴出させて、自分を傷つけた加害者として文句を言いつけてくるんです。「お前がもし別れたいなら一家で俺の前で土下座をしろ。」とかね、あるいは「俺もお前に苦しめられて仕事ができなくなったんだから、お前も会社をやめろ。」とかね。こういうことを散々言われているんです、被害者は。で、苦しいから着信拒否にしたり、あるいは警察に相談に行くのですが、加害者から見ると、自分が正当だと思っているところに、突然電話を切られたり、警察から注意されたり、どうなるでしょう。「さらに攻撃をされた」とか、「さらに馬鹿にしたんだな」となります。小早川明子さんストーカー講演

そして、三番目のポイズンになる可能性が出てきます。「俺の望みはもう絶たれた。もう二度と相手に会うことはできないだろう。」平野区の加害者は相手と決定的に別れることを知り、絶望したとき、あの世で一緒になろうと思って殺したのです。チャールズ池永は相手に着信拒否され、父親にもう二度と会うなと言われ、心が要求から一気に復讐へと、デインジャーからポイズンへと変化しました。私が何でポイズンと呼ぶかというと、ストーカーの存在そのものがこの段階になれば「毒」だからです。言うことは要求ではなくて、「殺してやる。」であり、住居侵入をするとか、名誉棄損という犯罪を行う。さっき言った刑罰法令に当てはまる犯罪の部分をやるってことですよ。そうなったら加害者に対してカウンセリングをするとか云々の前に、加害者から被害者をひき離すこと、あるいは加害者を捕まえてもらうことで、一旦距離を作らないと危険を防げません。私は、これはポイズンだなと思ったら、まず一緒に警察に行くってことをしたり、弁護士のところに行って告訴状を書いてもらったりとかするという活動に入るんです。あるいは、加害者の家族に連絡を入れて、加害者の家族に加害者の精神的治療をしっかりやるように提案するというようなことをします。もっと言えば、実は加害者を尾行し加害者がおかしい様子があれば、犯罪前に、私たちは何の公的な資格はないんですが、捕まえたことが何度もあります。例えば一例を言いますと、若年層の被害者って年々増えているんですが、今から言う例もそうなんですけど、女子学生と男子学生がお付き合いをしていました。就職の時期になりました。女子学生は就職が早く決まりました。しかし男子学生はなかなか決まりませんでした。段々焦っていくうちに鬱病になっちゃったんですね、就職が決まらなくて。女性の方は新しい就職、就職が決まったもんですから、新しい世界が開けててどんどん胸が、期待がふくらんでいって、新しい会社の人達と、入社の、内定の会社の人達と会うようになったりとかして、男性から見るとすごく遠くに行ったように見えたんですね。不安を感じて自分の悩みをもっと聞いてくれと、男性の方が被害者にお話したんだけど、女子学生の方もそんなことよりも自分の新しい世界の方が楽しいもんですから、勿論そこはあんまり相手にしなかった。というところで、男子学生が今度は非常に病態が悪化したと言いましょうか、学校に行けなくなっちゃいました。寝込んじゃいました。家の中でもゴロゴロしていますと。そのうち家族にあたるようになりました。飼ってる犬に火をつけるように、しっぽに火をつけたりするんです。で、もう完全な病気なので、その親が私の所に相談に来たのです。「完全な病気なので入院させましょう。」と、私は、言ったんですけれども、本人どうしても嫌だと言うのです。仕方がないので、そのままにしていたら、被害者が相談に来たわけじゃないですから、私は被害者の動向がわからないのですが、警察に被害届を出したということで、警察から口頭警告を受けることになり、正式な警告じゃないですが、電話がかかって来て「あなたもうメールするのを止めなさいよ。」って言われたとのことで、一気に攻撃性が増し、「あの女は俺を警察に売った。」と被害者を罵り、家の中でどうも様子がおかしくなっているとのことで私は家庭訪問しました。すると部屋にはオロナミンCが割れてて、ギザギザの所に血が付いていたんですね。男の子が布団の中に包まっているので布団を剥いで見たら、手首にオロナミンCの破片が刺さっていたんです。窓を見ると首吊りのロープが掛かっている。これはもう自傷する。「もうすぐに入院させなくちゃいけないですよ。医療保護入院させなくちゃいけないですよ。」と再度親に言うんだけど、親が就職に未練がありまして、精神科医療を受けると就職にさわるんじゃないかというところで決断しなかったんですよ。私とその相談者の間の信頼関係が常に問題になるんですが、私に相談しているわけですから、私は一応最善のことを言っているつもりなんですね。で、私の手におえないことだってあるわけですよ。ですので、「私には手におえませんと、この男性は。カウンセリングできません。ここまで病態が進んでいたら、ポイズンですから、精神科医療に入院させましょう。」と何度も言うんだけども納得しなかった。で、もう非常に心配で勝手にですけれど、私は実はこの加害者の男性にボディーガードというか尾行をつけたんですね。危ないと思ったもんですから。というのは、その人は寝てるだけではなくて時々外出をするというので、張り込ませました。それもですね、私の勘が当たったんですけど、女子学生の内定の説明会っていうのがありまして、内定説明会に行く日っていうのはちょっと危険だなと私思ったんですよ。男性が押し掛けるんじゃないかと思ったんです。恨みが募ってますから。で、うちの調査員が付いて行ったところ、渋谷の駅を降りて内定会場に行ったという報告があり、様子がおかしいと言うから、声をかけなさいと指示を出しました。声をかけたら、やっぱり刃物を持ってたんです。だから、もうすぐその場で捕まえて警察に連れて行きました。親は私を批判しました。どうして家に連れて帰ってくれなかったのかと。それはできません。家に連れて帰って彼が良くなるとは思わない。責任取らせませしょうってことで私がもう警察に連れて行きました。そうやって実は寝込んでいるところで警察に相談に行っても警察は何をしてくれるわけでもないですよね。できないですよね、役分として。まだ犯罪を行われていないのに取り締まれないです。だったら、誰がこの加害者の危険度を量って実際に事件を起こす前にそれを制止するのかって。そういう役割が日本には無いですよね。だから早期に介入するシステムがあれば、誰か第三者が、加害者の様子が分かって危険だと分かったら速やかに対処するような仕組みがあるっていうことが、やっぱり防犯を、本当に犯罪を防ぐには必要なことではないかなという事例のそれは一つです。

 加害者の特徴の三番目の『苦しみが反転して自殺または殺人を犯す』っていうところなんですが、殺害できなかったらどうなるかっていうと捕まりますよね。その男の子もそうでした。私の所に来る相談者の中には、実際に十何カ所刺されちゃいましたという人もいます。どういうタイミングで来られるかっていうと、当然加害者は刑務所に入っているわけですよね。刑務所に入っているんだけれど、出てくるっていうタイミングで相談に来るんです。やっぱり怖いから。「そろそろ出てくるんですけど。」っていう相談は多いんです。それで、いついつ出てきますという情報がもらえるようになってますので、大体少し刑期を残しておいて、特別遵守事項が付いているというような、そこに性犯罪が絡んでいると認知行動療法を少しはやれるというような、あるいは刑務所内でやってます。効果がありますというような書面をもらいながら、「でも期待できない。」と被害者は当然思うんですよ。
 例えば、この間来た被害者は今から数年前に拉致されてホテルに連れ込まれて強姦されました。その男は捕まって数年間の刑期だったんですけど仮釈放で出てくるということで相談に来られました。保護観察と特別巡視事項で認知行動療法もやるということですけれども、全然被害者としては「そんなことで彼の気持ちが変わっているはずがない。」と言う。「私は怖い。」と。保護観察の人に彼女は何度も何度も話をして、保護観察中の認知行動療法を受けて彼の心境の変化というのを聞くわけにはいかないんですかってお願いするんですが、「一切言えません。」と言われます。「加害者側の内面の情報は言えない」と。「どこでどういう治療を受けているかも言えません。」という答えなので、私の方で加害者の様子をしっかり見ましょうかということを提案しながら今経緯しているんですけど、あにはからんや、彼が釈放されてまだ半年もたってないんですが現段階で彼はまた刑務所に入っているんですね。それは、その女性じゃなくって、他の女性をまたストーカーして、仮釈放が取り消されたのです。このことが意味することは何かっていうと、捕まっただけでは加害者は治りゃしないってことなんですよ。数年間も刑務所にいっても治ってるわけじゃない。しかもその中で一応、刑務所内で数回の認知行動療法受けているとしても、経過が良いと言われてたのに治ってなかったっていうのはやっぱり見てとれるかなと私は思うんですね。
 他にも、十何カ所刺された女性っていうのはやっぱり怖いと言うので、男性が刑務所から出る時に、このケースは満期で出てくる、つまり全然反省してないので満期なんですけど、私が刑務所まで迎えに行って、3年カウンセリングしました。私は迎えに行く前に担当刑事と話をして、「出てきて彼を私はカウンセリングしようと思うんですけど、再犯するおそれがあるのだからしっかり見張ってくれるってことはするんですよね。」って言ったら、でも「もう彼は刑に服し終わってるのだから、これ以上警察は何もできるものでは勿論ないんです、保護観察が付いているわけじゃないですし。」と。「そのかわり小早川さんがもし刑務所に迎えに行った時に」と、私は彼の兄と一緒に行く予定だったんですけど、「お兄さんが来た時に、多分兄弟仲悪いから、兄を殴るだろう。殴ったらまた刑務所に入れますから。」みたいな話があって。まあ、そんなのは全ての刑事が言う話では絶対ないし、私は別にそれが全て警察がやることだと言っているわけじゃないんですが、私のそのケースではそういうふうに言われたわけです。でも、そうじゃないでしょうと。要するに、満期で出てきちゃったような人、何にもない人はどうやって再犯を防いでいるのかというと、それを見張るシステムが全然ないですね、日本にね。ということで、実際にそういう報復の心理で被害にあっちゃう人もいるということを考えると、やはり加害者のそういう心の病態を、危険度を、逼迫したものをどう把握していって治療につなげるか、はたまた治療できるのかという問題はすごく根の深くて大きな問題だと私は思っているわけです。その男も、最初のうちは毎日「今日は殺しに行く。」とか何とか「あいつの所に行く。」とか言ってました。

ルネスホールいのちと魂のメッセージ展

まあ、今ちょっと最悪の話ばっかりしちゃったんだけど、でも、私はいつも事件を、相談を受けると、どんな小っちゃい事件でも、とにかく命を、自殺と殺人を防ごうというのは大前提、コミットメントにしてるんです。カウンセラーとしての守秘義務は勿論あるんですけれども、今まさに犯罪を行おうとしている人がいれば勿論関係者に通報するっていうことをやってるわけなんですよ。加害者に会うときもまず最初に言います。「私を通して相手と話し合うってことは私は協力をするし、ストーカーはやらないでよ。ただし、もしやっちゃったら私が警察に通報するし、私が被害者に警察にあなたを訴えるようにアドバイスをするからね。」と言うんですね。最初に取り決めで言っておくんですよ。実際にエラーをして、また加害者が被害者に連絡を入れちゃったりしたら、その時は実際に本当に被害者に警察に行ってもらって警告を申し出るようにします。警告されてよくある報の心理も、「これは小早川のせいなんだ。」っていうふうに思ってもらえるわけで、恨みのエネルギーを私の方に振り向けることができるっていうメリットがある。私はそうやって介入しながら、いざっていう時は私の主導で警察沙汰にするよというような安全弁を働かせていくわけですね。

何で私みたいな、何の資格もない、何の後ろ盾もない人間が、ボディーガードやってくれたりとか調査やってくれたりとか、そういう仲間はいますけども、基本は私が一人でやってます。何でやってるのというと、やっぱり私が被害者だったっていうことがすごく大きいです。被害者だという私は自覚があるのでやれるんだなと思います。被害者のために何かこう一肌脱げるっていうのは、やっぱり被害体験があるってことが大きいんじゃないかなって思うんですよ。ただ、被害体験者でなくても相談に乗って対応できる仕組み、これはどういうふうに解決したらいいのだろうかって見晴らしつけられて、被害者が何を望んだらいいのかってところを一緒に話し合いができ、実際に動いてくれる、具体的に手助けしてもらえる役割が世の中には必要です。私は弁護士がもっと積極的に被害者の相談に乗るべきと思っています。弁護士は、加害者とも被害者とも会うことができ、しかも犯罪被害者の弁護士もいれば、被疑者側の弁護士もいますよね。この両方の立場を持つ弁護士という役分をストーカー被害者を守るために力を尽くしてもらえないだろうかっていうことは、常に私が期待しているところです。最近よく弁護士の方と話し合うんですけれど、ストーカー問題はいわゆる犯罪性という側面はありますけど、このような心理的な反応というのは、実は、どうなんでしょうね、実は疾患性という面もありまして、弁護士もこれを理解すべきだと思うのです。
 疾患性の一つは「誤った認識のあり方」という疾患性、「パーソナリティーに問題がある」という疾患性、自分が悪いことは分かりましたよ、俺だって止めたいですよ、でも止められないんですよっていうある種の禁断症状みたいな「行動制御に問題がある」疾患性。この三つの疾患性っていうのがストーカーの加害者の特徴としてあるわけです。
 認知の歪みっていうのはカウンセリングで対話したり、あるいは認知行動療法などでカウンセリングをすれば、かなり歪みは正せます。「あっ、自分が悪かったんだ。これは俺のせいだったんだ。相手に色々文句は言えないんだ。」ってところまで分かるところまでは回復できると思います、私は。
 ただ、「分かってるよ、俺が悪いんだよ、でも俺はあいつに復讐するよ。」っていう、こういうパーソナリティーに障害がある、いわゆる境界性人格障害とか、聞いたことあると思いますけれど、自己愛性人格障害とか色んなパーソナリティーに問題がある人にはもっと踏み込んだカウンセリングが必要なんですね。これをやると言っている医者が今出てきています。で、私もカウンセリングだけじゃなくて、セラピーをしているのはその部分です。要するに、言葉に働きかけてもダメな部分ですよね。何でそんな性格になっちゃったの、何でそんな人格になっちゃったのっていうところを切り込んでいくんですよ。そうすると、実はストーカーの加害者の半分は女性だとさっき言いましたけど、それは女性も男性も同じなんですよね、パーソナリティーの歪みっていのは。というのは、両親から生まれて育ってきた、学校がある、家庭があるっていう中で、自分はまっすぐ伸びていくはずの人格っていうものが、ある有害な心理体験を経た人間がいるとします。まっすぐ伸びていったはずの人格が歪むんですよね、捻じれるんです。どうせ俺はこの世に生きている価値はないんだ、誰も私のことなんか面倒みないんだっていう自己否定、自己肯定感がないってやつですよ。そうすると世の中を恨む。何を見ても、自分を攻撃しているんじゃないかというような過覚醒、ここにいつも自分は虐められてるんじゃないかとか、相手は自分のことを馬鹿にしてるんじゃないかっていうような一つの検索エンジンを貼っちゃってるんですね。この検索エンジンをいつ貼ったのっていうところを聞き出すのは、実は本人も分からないです。それは、私がイメージ療法といってセラピーの中で幾つかのエクササイズをやって、今日は時間が無いので話しませんけど、やるところなんですね。じゃあそこまでは治りますねと。
 問題は、その最後の段階です。さっき言った2%。認知の歪みとパーソナリティに問題があるっていうだけですとカウンセリングで防げる可能性があるんですが、防げないのは自分の行動が制御できなくなっちゃってる人間です。分かっちゃいるけど止められない。恨みのエネルギーに全身が浸かっちゃってて這い出せない、もうこれだったら俺は自殺するからその前に殺すんだみたいな。パーソナリティーが重い病態にある人も事件を起こしますけど、例えば伊勢原事件の加害者なんかはパーソナリティー障害だと私は思います。反社会性人格障害だと思います。でも、彼は元奥さんを刺した後で、顔と首を刺した後で、とんでもないことをしたという言葉を言っています。ということは、まだ自分の恨みというものに対して振り返りができているというふうに思ってもいいと思います。でも、本当に行動の制御ができなくなっちゃった人はそんなことすら言わない。もう頭が完全に、何ていいましょう、自分を振り返る力を失くしています。そういう人に対してじゃあどういうふうにカウンセリングが効いていくのかということですが、全く無理だとしか言いようがありません。実は私はその部分をこだわって、十数年、その部分にこだわって精神科医を訪ね歩きました。解決はなかったんですよ。でもね、十何年やってきて、この仕事を、神様は私にご褒美をくれたと思ったのは、去年、本にも書いたんですが、条件反射制御法という治療法を発見した千葉の下総精神医療センター平井愼二先生とお目にかかることができて、まさにその部分を治療するという期待っていうものを、ある種確信に近い期待を私は抱くことができました。現在今私はその先生のところにストーカー行為をした人を入院してもらっています。経過が素晴らしく良いのでいつか発表したいと思うんです。

中途半端になっちゃいましたけどこれでお話を終わります。後でまた質疑や討論の中でお話をさせてもらいます。どうも失礼しました。

対談「ストーカーを考える」

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